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大木町の特産といえば「きのこ」が有名ですが、「小林きのこ産業」は、50年近く前に社長の小林さん夫妻が、一からスタートさせた事業でした。同社が生産するきのこの半分は地元筑後エリアのスーパーや道の駅等に出荷され、好評を博しています。また、平成17年からエノキ加工品も多数開発し、「もっと美味しくエノキを食べてもらいたい」との思いから、エノキの食べ方も様々に提案。毎日料理を作る女性目線に立った、ユニークなラインナップから目が離せません。
大木町でキノコ栽培を一からスタート
若者の雇用にも一役買う企業に成長。
今を遡ること46年前、小林さんがキノコ栽培を始めたのは、二人がまだ婚約中の時でした。
「大木町が「きのこの町」といわれるようになったのはこの大莞地区からなんですよ」と、妻の小林律子さんは当時を振り返ります。当初はいちご農家だった小林家ですが、町の基盤整理前のこの地区は、大水のたびにしょっちゅういちごの苗がだめになることの繰り返しでした。そんな時に勧められて始めたのが、えのき栽培です。当時1000万円の設備投資をして、利益が出たら増設する、を繰り返し、会社を大きくしてきました。若者の雇用をしたいと思っていたので、「絶対に会社にしよう」という強い思いがあったから頑張れたのだといいます。そうして、努力の甲斐あり、平成元年に有限会社を設立することができたのでした。
とはいえ、道のりは決して平坦ではありませんでした。当初はエノキの菌種は長野からわざわざ取り寄せ、福岡空港までまで受け取りに行っていました。しかし、苦労して取り寄せたにも関わらず、1ヶ月もすると雑菌で白カビが生えてくるなど、苦労の連続でした。
その後、夫の良充さんがえのき部会長の時、種菌センターが必要だとの思いで、しめじ部会の部会長とともに大木町の助成金を利用して種菌センターで種作りの開発をしてもらうことに。その甲斐あって種菌が安定してきたことから、ようやく生産量も増加。以来10年以上スーパーなどで地道な試食販売を展開してエノキを宣伝し、だんだんと認知されてきたのでした。
現在大木町のキノコ農家は18軒、その中でエノキだけに特化して作っているのは同社を含め2軒だけだといいます。
小さな会社から大所帯となった今、同社の従業員は持ち場ごとに主任を決め、それぞれが責任をもって働けるように配置を工夫しています。
パッケージする時には、お客さんが買いたくなるように心を込めて綺麗に入れるのが会社のこだわりの一つ。出荷先から、「小林さんのところは品物がいい」と言われているのも、こうした丁寧な作業があってこそ。
また、近年ではベトナムからの研修生も積極的に受け入れており、人材育成にも一躍買っています。「ここに来てよかった、日本に来て楽しかった」と思って帰ってほしいから、働きやすい環境づくりも真剣に。時には母のような気持ちで叱ることもありますが、3年間の研修期間を終えて立派に成長し本国に帰る研修生たちの姿を見ると本当に嬉しくなる、と小林さんは目を細めます。
エノキ料理の提案や便利な加工品で
エノキの美味しさを広めたい。
「エノキは旨味成分が他のどのきのこよりも高いんですよ。骨の強化にもいいから、子どもにも高齢者にもどんどん食べてほしいんです」と胸を張るだけあり、同社は生産だけにとどまらず、催事等を通して様々なエノキ料理の提案も次々と披露し、エノキの普及に一役買っています。
例えば、小林さん一押しの「エノキのかき揚げ」は、ツナとエノキに小麦粉をまぶし、水代わりに溶き卵を混ぜて油で揚げ、塩胡椒を振って出来上がり、という簡単なもの。水でとかないのがポイントで、こうするとエノキがカラリとあがって美味しいのだとか。
エノキといえば、つい、味噌汁や鍋の具といった、脇役のような感覚になりがちですが、既成概念を取り払ったエノキの新しい食べ方は、試食をした人に大好評なのです。
また、エノキの加工品が多いのも同社の自慢です。一つだけの食べ方でなく、何通りもの食べ方ができますように、そんな思いを込めて、試作と試食を繰り返し、エノキ関連の商品だけで10種以上も開発販売。その他にもいちごクッキーやジャムまで多彩に揃っています。
取材時に教えてもらった、人気商品をご紹介しましょう。
「べんりジュレ」(432円、500円、701円)
ビタミンD豊富な有機黒酢と天日干ししたエノキに寒天を混ぜてとろみを付けジュレ状に仕上げたもの。天日干ししたエノキは旨味成分であるビタミンDが通常の5倍、旨味成分13倍にまで上がるので、栄養価が高く、サラダや焼き物など、なんにでも使えます。黒酢の酸味とエノキ独特の風味が口いっぱいに広がってクセになる味わい。刺身にのせてカルパッチョ風にして食べるのもオススメです。
「きのこのごぶ漬」(瓶入り432円、袋入り324円)
エノキと大根の佃煮のような味わいで、ふんわりと黒酢が利いた甘辛い醤油味。時間差で喉越しにピリリと唐辛子の辛味が来るのもバランスが良く、これだけでパクパクと食べてしまえる美味しさです。炊きたてご飯の上にのせたり、冷や奴に乗せれば食事のおかずとしても立派な一品になりますし、やわらかいエノキとパリッとした大根の歯ごたえのコントラストが絶妙で、酒の肴にもよし! これ、パンにのせてもいけそうです。食べるほどに食べ方のイマジネーションが膨らんでいき、箸が止まりません。人気商品だということにも納得です。
「大木産の天日干し べんり!エノキ」(220円/15g、430円/30g)
一袋(15g)で、なんとえのき2袋分入りと聞いてびっくり。そのまま食べてもスナック感覚で美味しいのですが、パスタや和え物や味噌汁の具等、いろんな料理にさっと入れて熱を加えるだけで美味しく食べられます。
小林社長のおすすめは、炊き込みご飯。米2合に一袋入れれば、噛むほどに美味しい炊き込みご飯の出来上がり。また、カレーのご飯をこのエノキ入りにしたら、さらに美味しさがアップ。エノキの食感がカレーの味を引き立てます。
さらに、2018年9月には、新商品のエノキ「大木白雪919」(80円/100g)も発売されました。凜として美しい、かなり美人のエノキです。真っ白ですっと細く伸びたこのエノキはシャキシャキの食感が特徴。この菌種に合った環境を試行錯誤して整えてようやく完成した自信作で、スーパー「アスタラビスタ」やFコープ、道の駅で販売し、早速注目を集めています。
「私たちにとって、きのこは我が子と同じ。子どもは2人いますが、3人目の子どもはえのきだと思っているくらいです(笑)。きのこは手を入れれば入れるほど、いい子になるんです。温度管理、風当たりで大きくなる加減も違ってくるし、育てがいがあるんですよ」と、小林さんは愛おしそうに菌種の並んだ部屋を見渡します。
夢は社長と一緒に一代で築き上げた会社を、孫の世代にまで引き継いでずっとこの仕事を継続していきたい。そして、大木町にしかない加工品をたくさん開発したいと、目を輝かせる小林さん。
そのためには展示会にもどんどん出かけて行き、ネットワーク作りにも余念がありません。各地でいろんな人に会って刺激を受けアイデアを得るたびに、エネルギーが湧いてきます。
我が子を愛するように慈しんで育てた大木町発のきのこ。小林きのこ産業の真っ白いエノキが、多くの人々の食卓に、様々な定番料理となって当たり前に並ぶ日は、そう遠くない未来にやってきそうです。
(取材日2018年10月25日)
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