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ナビを頼りにたどり着くと、田園風景の中にころんとサイコロのようにかわいい小さなお店。
パンを手に取った人全ての「日々の糧(カテ)」となりますようにと願いを込めて作るカテノブレッドのパンは、ハード系のパンを中心に食パンやスコーンなど、約20種類。
噛むほどにパンの旨味が口一杯に広がる、くせになるおいしさです。
欲しいパンは予約して買いに行くと安心
ドライブがてら、散歩がてら訪ねたい。
お店に入ってみると、店内には出来立てのパンがぎっしりお行儀よく並んでいます。週2日、金曜と土曜のみの営業とあって、週末を待って訪れるお客様が次々にやってきます。小さな店内なので、譲り合いながら1組ずつ入店し、とりどりのパンをじっくりとチョイス。
Instagramでパンメニューをチェックできるので、好みのパンが決まっている人は、前日までに予約してから買いに行くとスムーズです
「食卓で料理と一緒に食べられる日常のパンを作りたい」という店主・猿渡郁子さんの思いの通り、一つ一つのパンに食材へのこだわりがあふれています。
例えば、小麦粉は国産中心で猿渡さんの目指す理想のパンに合うものをその時々で選びます。また、パンに使う餡やトマトソースなども全て手作り。使用するバターや調味料も、長年の経験から猿渡さんのお眼鏡にかなったものばかりです。
食パン2種類、バゲット、カンパーニュなどのハード系を中心としたラインナップで、菓子パンやスコーン、ピザと種類も豊富です。
11時のオープンを目指すようにお客様が次々に来店。オープン時の忙しさを見て、午後に出直してお話しをうかがうことにしたものの、このペースでは午後にはパンがなくなっているのではないかと心配に。念の為パンを予約してから店を出ました。
外にも入店を待っているお客様がいらしたので声をかけると、近所にお住まいのご家族でした。小さなお子さんの手を引いて、のんびり散歩がてらパンを買いに来たのだとか。「とても人気のお店で、いつも午後には売り切れていてなかなか買えないので、今日は早めに来ました」とのこと。
15時にもう一度訪ねたら、案の定あんなにたくさんあったパンは完売していました。予約しておいてよかった!
アレルギーの人も食べられる、
どこのパンとも違う、自分が美味しいと思うパン。
猿渡さんはパン職人として9年間研鑽を積み、2006年に実家のあった大木町で、自らのお店をオープンしました。結婚と出産を経てしばらく店舗営業を休んだ後、2019年に週2日で営業を再開。がむしゃらに働いてきた時期を通りすぎ、今は「ゆっくり休んでしっかり作る」スタイルにシフトしたのだとか。週2日の営業スタイルにしてから5年が経過し、今では、そのサイクルに合わせて定期的にパンを買いに来てくれるリピーターも増えたといいます。
「これまでは学んできた名店の影響を受けたパンを懸命に作っていましたが、出産、子育てを通して、8年間パン作りを休みました。もちろん、その間も食パンを焼いたりとパンを作ることはありましたが、この空白の時間は私に新たな感覚をもたらしてくれました。過去に学んだパンから脱皮して、どこのパンとも違う、自分が心からおいしいと確信できるパンを作りたいと思うようになったんです。」
自ら「ゼロからのスタート」と語ったお店は、日々の糧(かて)を作る「カテノブレッド」という、思いを込めた名でスタートしたのでした。
猿渡さんが自分だけのパンを意識するようになったのは、幼い娘がアトピーだったからということもありました。
「自分の子どもに食べさせたい」「自分が歳を取っても食べたいパン」をイメージして、まずはパンに使う材料、添加物や油について徹底的に調べることに。
試行錯誤を重ね、カテノブレッドで使う材料は一つずつ決まっていきました。
塩は天然塩、白砂糖は使わずきび砂糖を使用。くるみは一度天火でローストし、その後えぐみを取るために丁寧に皮を剥きます。ドライフルーツは、蒸してやわらかくしてからパンに使うと甘みが増すのだとか。北海道産小豆は甘さ控えめに。そんな具合に、手間ひまかけてじっくりと準備を進めます。
今では、アレルギーのある人にも、その人に合った別の提案ができるまでになったというのですから、その努力には頭が下がります。
こんなに手間ひまかけて、材料にもこだわったパンなのに、1つ160円〜300円程度、食パンやべゲットも300円台と、価格も良心的。お客様が、つい買いすぎる気持ちもよくわかります。
生地の呼吸を感じるようにパンと向き合い
パンをもっと多くの人に届けたい。
パンを作っている時の猿渡さんは、全身でパンの呼吸を感じようと感覚を研ぎ澄ませているようで、話しかけることを躊躇してしまうほど。パン生地とその香りを感じながら、日々変わる生地の「差」を体感しているのだそう。
自分の作りたいパンの形が見えてきた今、次なる目標はカンパーニュやバゲットなど、シンプルな生地のパンを作り、ネット通販に挑戦すること。店を訪れる人だけでなく、どこにいても美味しく食べられるパンを届けたいー。
生地に自信があるからこそ描ける、新たな夢の始まりです。
帰宅してから購入したパンを食べてみました。食パン、カンパーニュ、ハード系のブルーベリーパンにスコーンまで欲張ってみましたが、猿渡さん曰く「時間が経ってもおいしさが変わらないんですよ」と胸を張るだけあり、食事の主食としてもおやつとしても、どれもおいしく噛みごたえも十分。
翌日以降は軽く焼いて食べると、焼きたての風味がよみがえり、かなり満足度が高いのです。
スコーン好きの私は、お店の外で会ったお客さんに勧められたスコーンが気に入って、結局家族の誰にもあげず一人で平らげてしまいました。外側さっくり、中はしっとり、ジャムやクリームをつけるのはもちろんのこと、なにもつけなくてもこれだけでしっかりおいしい。まさに理想の味わいでした。
次はどれにしようかな。そんなことを思いながら週末を待つお客さんの気持ちがわかったような気がします。
(取材日2024年 2月9日)
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