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大木町で特産のあまおうを作って11年。
マンゴーや野菜作りに着手し、いちご作業用のイスも独自開発。


ビニールハウスが並ぶ広大な農地の一角で、
いちご農家として福岡県ブランドの「あまおう」を栽培する三好農園。
若くして脱サラして一念発起し、農業を志した三好令祐さんが、
家族とフィリピンからの農業実習生とともに作るいちごは、つやつやの赤。
自らを「チャレンジャー」と称するように、いちご作りのみならず、
作業用の椅子も開発したり、ハウスの中でマンゴー栽培にも挑戦するなど、
エネルギーに満ちています。


帆船で大海原に乗り出すことが夢だった。
少年時代の冒険心を今、いちご畑で!

 その日の出荷を終えたばかりというハウス内は緑の葉ばかり。しかしよく見ると、葉陰には次の出荷を待つように、次のいちごの粒がちらほら。
「どうぞ食べてみてください」の言葉で、赤く熟れた一つを頬張ると、みずみずしい果汁が口の中いっぱいに広がりました。


「甘い」、思わず口をついてでた言葉を聞き、三好さんは満足そうに笑います。

三好さんが農業に注目したのは、まだ20代の頃。数学が得意だった子ども時代、自分で帆船を作って海に乗り出したいといつも思っていたといいます。大学に進学したものの2年生の時に休学。自分がやりたいことを求めて建築現場でアルバイトをしながらお金を貯め、沖縄に6か月間滞在します。
その後、帆船造りの夢をいったん諦め福岡県で就職したものの、「自分の力で人に夢や希望を与えられる仕事をしたい」との思いを諦められず、農業に従事することを決意したのです。
 父は漁業、祖母は農業に従事していたので、子どものころから漁や農作業の手伝いをしていた三好さん。自然が好きだから、「農業ならきっと長続きする。いろんなチャンスがある」と。とはいえ、なんの実績もない初心者です。まずは福岡県庁に相談に行き、農業に関する技術と知識を身につけるため、筑紫野市にある福岡県農業大学校を勧められます。そこで一年間、一から農業について学びつつ、一方では本格的に農地を探し始めることに。そうして出会ったのが、大木町と福岡県の特産いちご「あまおう」作りだったのです。


命をつかさどる食べ物を生み出す農業は
天に一番近い仕事なのかもしれない。

 いちご作りや農業の魅力を問うと、「思うようにいかないところが、自分の心をくすぐるんです」と即答した三好さん。生き物相手だから、天候や病気のせいで収穫を目前に枯れることもあるといいます。
小学生の子どもの父でもある三好さんにとって、いちご作りは子育てのようでもあるのだとか。しっかり見ていないときちんと育たない。収穫も丁寧に、作業の多くをスタッフと共にできるだけ手作業で行います。

「体もきついし汚れるし、もう必死です。でも、それらの大変なことよりも、楽しいことの方が勝っているから続けられると思っています。自分の判断で、やりたいことを拡大することもできますし、良いものを作ればよい値段で売れる。頑張った分だけ得るものがあるんです。食べ物は生き物が生きていくために絶対必要なものですよね。そういう意味では、天に近い仕事かもしれません。そんな仕事に関われることは、無上の喜びです」。


フィリピンからの農業実習生を受け入れ農地拡大
作業用のイスを開発し、夢は無限大に。

 三好農園には現在2人のフィリピンからの農業実習生がいます。三好さんはフィリピン人である妻とともに、実習生の受け入れをして日本の農業技術を学んでもらうことで、日本とフィリピンの架け橋にもなりたいと考えています。
 また、昔、帆船に乗って旅に出たかったように、今の三好さんには次なる夢も。新たに土地を手に入れ、あまおうに次ぐゴーヤ、オクラ、レタス等、野菜や栽培に取り掛かろうとしているのです。


また、あまおうのハウスの隣にはマンゴーの木々も植えられています。
8年前に栽培に着手し、ようやくここ数年、地元に向けて出荷できるようになったといいます。大木産のマンゴーを町で気軽に手にする日も近いかもしれません。

さらに、三好さんの挑戦は続きます。いちご栽培の作業が少しでも楽になるようにと、知人の鉄鋼所に依頼していちごハウス専用の「マルチ作業用イス」を独自開発したのです。


いちごの栽培で重要な工程の一つに、土の上に黒いビニールをかける作業がありますが、多くのいちご栽培の従事者は低姿勢での長時間の作業で膝や腰を悪くするのだとか。こうした負担を少しでも軽減できるものはないかと試行錯誤し、小規模事業者持続化補助金を受けてこのイスを開発。まさに、いちご農家のためにいちご農家が開発したイスなのです。

ハウス内の狭い通路で横向きに座れ、いちごを正面からみられるのがこのイスのポイント。タイヤ付きで可動式なので、座ったまま移動もスムーズにできます。現在、改良も最終段階に入り、2024年に発売予定です。
 
「私は、自分の仕事である農業を通して、誰かに夢を与えられる仕事をしたいと思っています。苦労しても懸命にやったことが実を結べば、いつかそれが誰かの力になると信じているのです。」

三好さんの作るいちごにはつやがあり、濃い甘みがあります。その先に、いちごを口にした人の笑顔が見えるようです。

                 (取材日2023年 12月26日)


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